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読書の秋「日本音楽の授業」

みなさまはどんな秋をお過ごしですか?

秋と言えば、「読書の秋」となぜか思います。

そこでみなさまにお箏や、邦楽や音楽の本のご紹介をさせていただきたいと思います。

一度には、書ききれないので、1冊ずつ書きますね。

まず一番にご紹介したい本は、
「日本音楽の授業」
著者は、山内雅子 先生
出版社は、音楽之友社 (2001年)

著者は、ピアノ専攻で音大卒業後、 

 

東京都の小学校教員として、さまざまな音楽の授業や指導法の研究にかかわりながら、地唄・筝・三弦の師匠に弟子入りされてお稽古を続け、東京都教員研究生として、東京藝術大学音楽教育研究質に派遣され、研究助成論文最優秀賞受賞。

私も著者にご了承いただき、授業では、必ず紹介させていただいております。

どんな本かと言うことは、著者の「はじめに」から
<日本音楽の授業>
伝統音楽のこころを大切にして
きく・うたう・おどる・かなでる・つくる

「はじめに個性豊かな現代っ子たちが、腰を割って腕を振りかざし、真剣に鼓面を見詰める姿の美しいこと。

腕白な男の子たちがやお茶目な女の子たちが、神妙な面持ちでお筝のまえに正座をし、一音一音心を込めて引いていく姿のいとおしいこと!

全身の神経を集中し、ひとつの音の余韻を聞き味わう子どもたちの姿の頼もしいこと!
友達とすぐにケンカになりアンサンブルの活動がいつもできなかった子どもが、、

地域のお囃子に取り組んでから見事な変容を遂げ、音楽のまとめ役にまで成長したことも忘れられません!

日本の伝統的な音楽は、理屈を超えて直接現代の子どもたちの心に働きかけてゆく魅力を持っているのではないかと改めて感じさせられるこのごろです。

私が音楽科経営の中核に日本の伝統音楽を据えるようになって6年がたちました。

東京都の研究生として、東京藝術大学の音楽教育研究室と邦楽科で研修をさせていただいたのがきかっけです。そのおり邦楽科で実技指導を受ける中で、音楽そのものの繊細かつ広がりのある表現に惹かれたことはいうまでもありませんが、それ以上に日本の伝統音楽が有する精神性に、美しさと新鮮さ、そして今の日本人が失いつつある尊いものを感じたのです。

この精神性を抜きにして日本の音楽のよさを子どもたちに伝えることはできないかと考え、以来学校の音楽授業においても、日本の伝統音楽を指導するときは、心を静めてひとつの音を聞き味わったり、正座で一つ一つの音に心を込めて演奏したり、また脱いだ上履きをきちんと揃えて置く、楽器や物をまたがないなど、子供にもわかる形での精神性を大切にして実践をしてきました。

一年目は、まず音楽授業に筝を取り入れ、多様な音楽発動を行いましたが、正座での授業に子供たちは吸い込まれるように入ってきてくれました。

子供たちは、理屈ではなくまず実際に筝に親しむ活動を通して、箏の音色の美しさや日本の音階の美しさを味わい、日本の音楽に対して関心を持つようになったのです。

さらに・間・余韻・等の魅力や、自然の音を大切に味わう日本人の完成を揺さぶるような音楽体験にまで深めていきたいと考え、表現する活動とともに、音楽を聴いて味わう活動も重視するようになりました。

その結果、子供たちは、日本の音楽のよさについて「一つの音の強弱や、響きや、余韻まで楽しもうとして、音楽に取り入れているところがいい」「尺八などで雑音みたいなものを入れて、とれがあっているとことがいい」等々、そのよさを自分の言葉で、音楽的な要素にまで具体的に触れて、ごく自然に語ることができるまでになって、小学校を卒業してゆく姿が見られるようになりました。

箏から始まって、和太鼓、お囃子、三味線、篠笛。地域の郷土芸能、民謡、現代邦楽と、扱う領域にも広がりが生まれてきましたが、これらの日本の伝統的な音楽でで、養った力が、他のジャンルの音楽や日常の生活の中にも生きてきて、具体的な態度となっても、現れてきたように感じます。たとえば、人の話を礼儀正しい態度で最後まできちんと聞くことができたり、靴やスリッパなどをさりげなくそろえたり・・・と言ったことです。

急激な社会の変化の中で「子供たちが変わったなあ」と感じさせられることが多いこのごろです。

時代の流れに逆らうことはできません。

でもその延長線上に、他人の迷惑も顧みない身勝手な若者の行動や、胸が痛む青少年の事件があるとすれば、何とかしなければなりません。

私は日本の音楽を通して、日本人の感性を呼び覚まし、もう一度足元を見直すことによって改善の道が開かれていくような気がしてなりません。

日本の伝統音楽の学習は決して古い時代への逆行ではなく、地に足の着いた、新しい時代の生き方に向けての取り組みの一環であると考えます。

受験一辺倒の家庭の子供や過干渉の子供、愛情不足の子供、複雑な大人の事情の中で不安定な子供など、さまざまな子供たちを前に日々葛藤はありますが。

でもすべての子供たちの幸せを願い、明るい日本と世界の未来を夢見て一生懸命取り組んでいる毎日です。

これから、学校の音楽授業にどんどん和楽器が導入されてくることと思います。

邦楽の専門教育を受けていない多くの私たち音楽教師が、日本の音楽の指導において何を大切にし、どのように指導したら子供たちの幸せにつながってゆくのか、これまでの実践を通していま、私が大切に思っていることを、本書を通して少しでもお伝えすることができたらうれしく思います。」

2024.10.12